ほつれ・ほころび修理(かじられ猫の遊び相手にされた「黄色いおサルさん」)

今回は、大小2体の「黄色いおサルさん」のクリーニングと修理のお話です。
小さいぬいぐるみは頭から足までの長さが約30センチ。大きい方はその約3倍の90センチです。大きい方はぬいぐるみクリーニングだけで修理はありませんが、小さい方の修理のための参考にと、ぬいぐるみ修理工房に送られてきました。

この小さい方の黄色いおサルさんは、猫の遊び相手にされたそうで、かじられたり、引っ掻いたりされアチラコチラ傷だらけです。

アゴの下の首の部分が大きく破損、生地がぼろぼろで、手足や胴体部分に穴が空いています。

後ろから見たぬいぐるみ。頭部分が胴体と離れてしまって、惨めな状態です。胴体や手足にも所々に破損もあり、手穴が開いているところがあります。後頭部は新しい布で作り変えなければなりません。

満身創痍という状態でしたが、口と顔は大丈夫です。良かったですね。

さてそれでは修理に取りかかります。
まずは頭部の綿を仮セットします。頭部の布を新しく付け替えるのに、中綿を仮に入れて頭部の大きさを決め、新しい布の寸法を決めるためです。

新しい布をかぶせていきます。丸みを出すのがこの工程の難しいところです。
このぬいぐるみの頭部分は、中綿もなくなって、すっかり元の形がわからなくなっていました。
ぬいぐるみは元の形がわからなければ、修理は出来ません。そんな場合は、大きなぬいぐるみを参考にして、同じように作っていくのです。

元の形がわからなければぬいぐるみの修理は困難です。ぬいぐるみ修理のスタッフは、ぬいぐるみ工房にストックしてある多くのぬいぐるみの写真カタログをみて、そこになければ。インターネットで検索してその写真を手がかりにして、形を作ります。この黄色いおサルさんは、珍しいものだったので、資料はなく、お客様が参考にと大きいおサルさんを送ってくれました。

破損していた首の部分も新しく作り変えます。
ちなみに、ぬいぐるみを修理するのに同じ布を使うわけですが、それをどうやって手に入れるの?
と聞かれることがよくあります。

それがなかなか大変なのです。ぬいぐるみの修理の最も苦労するところです。ぬいぐるみ工房に素材のストックがなければ、素材仕入れスタッフが、何軒もの生地屋さんを訪ね探しまわります。特殊なものになると、日本中からさがして取り寄せることもあります。
色、質感、毛足の長さが一致しないと使えないのです。生地屋さんにはありませんでした。やむなく同じような生地を使用している「被り物」を購入、右側をカットして使うことにしました。

次に手足の穴の修理です。一度手足を外します。

中綿を取ってしまいます。

そして広げました。破損した穴が見えます。

裏からあて布と接着芯を当てます。

そしてアイロンの熱で接着します。

胴体の布にも穴があいていました。ひっくり返して裏から補強します。

生地と両面接着芯を作ります。それを穴の部分に当てます。

そしてアイロンの熱で接着します。

外れた首の付根は破損部分が大きいので違う方法で裏から補強します。

ミシンがけです。裏から布を当てミシンを掛けていきます。破損部分がぼろぼろになっている場合は、ミシンがけのほうがきれいに仕上がります。

次ぎに破損している後頭部の交換です。

仮止め用のまち針にそって、縫い付けていきます。
まち針には鈴がついています。これはまち針が中に入り込んで行方不明にならないようにするための、プロの縫製職人にとって欠かせない道具なのです。

もちろん裏から縫い付けます。

手縫いのプロの縫い方は、「返し針」と言って一度針を入れ、そして少し戻ってまた針を入れます。
この方法が、ミシンで縫うより丈夫に縫うことができるのです。

使う糸は強くて丈夫なプロの間で、手縫い糸の代名詞と呼ばれる「シルコート20番」を使います。
そろそろ縫い終わります。

ひっくり返して頭の部分のほぼ出来上がりました。

このあと修理した手を付け、中綿を入れ整形します。そして最終仕上げ工程へと進みます。

最終仕上げ工程です。
開いた穴を裏から補強しても表側からの見た目は十分ではないので、表側から植毛します。

まずぬいぐるみの布と同じ素材を選びます。毛糸から素材を作ります。素材選びは色、質感がピタッと同じものはなかなか少ないのです。

ほぼ同じ色のものがありました。

毛糸を束にしてほぐしていきます。

綿状のものが出来ました。

そして専用の針を使って埋め込んでいきます。生地の基盤まで針を入れるので、抜けることはありません。
広範囲の植毛には縫い付ける方法を取ります。

そしてはさみで調髪します。

頭のつむじを整えたらすべて完成です。

ポーズをとって完成です。ぬいぐるみのクリーニングと修理は完了しました。

大きいおサルと並んで記念撮影です。小さいおサルさんが元気になって、大きいおサルさんもうれしそうです。